2024年6月18日にN/S高等学校の3年生の松本さんから、サービス経営学部の藤野洋教授(専攻:中小企業論、企業の社会的責任(CSR)、持続可能な開発目標(SDGs)、コーポレートガバナンス)がオンラインでインタビューを受けました。
松本さんのインタビューの目的は、発展途上国の貧困問題に対する企業の取り組みをCSR、あるいはSDGsの観点から研究して自主的に作成している論文のための情報を聴取することです。
松本さんはインターネットを通じて、かつて藤野教授が中小企業を対象としてCSRに関するアンケート調査(以下、調査)を実施したことを知り、本学にインタビューを申し込みました。本学は高大連携や社会貢献の見地からインタビューにお応えすることにしました。そして松本さんご自身の問題意識に関連する質問をあらかじめお知らせいただき、藤野教授がオンラインで応答と追加的な説明をしました。
◆説明内容の抜粋
?CSRは経済(利益)だけでなく、環境や社会についてもバランスよく取り組むことが企業の責任であるとの考え方。
?多くの会社が事業で社会に貢献することが創業の理念(経営理念として続いている)。
?環境は保護しても従業員に過酷な企業、従業員には優しくても環境を破壊する企業はCSRの面ではよくない。このため、現代的なCSRへの理解が中小企業には必要。しかし、これに対する理解度が特に、高齢の経営者の中小企業では低い。
?会社制度は所有と経営の分離を予定しており、会社の所有者的存在である株主利益の最大化が経営者の義務。このため、社会通念上許容される範囲、あるいは経営に統合するために、会社の資金を途上国の貧困問題への取り組みを含めてCSRに使用する必要がある。所有と経営が一致していることが多い中小企業にとっても利益の確保は重要。
?このため、CSRとして取り組む項目は自社の経営に関連する分野が中心になる。
?特に発展途上国の貧困問題は企業にとっては経営に統合しにくい。
?「調査」では地域社会への貢献に対する中小企業の自己評価が低い。これは、例えば中小企業が行う寄付はたいてい大企業よりは少ない。しかし、個人よりは多いことが多く、立派な地域への貢献と言える。
?かつては、事業と納税だけが責任との考え方も企業の中では珍しくなかった。しかし、10年前より重要性が高まっている項目や、サプライチェーンの下流からの環境問題への対応の要請などもあり、中小企業の意識が徐々に変わりつつある。
?乳業メーカーの食品被害(HACCP導入も工場管理不十分)大手自動車メーカーのリコール隠し(死者)などが2000年代初頭に起きたこともあり、広義のコンプライアンス(法令等遵守)への意識も高まってきた。
?「途上国の貧困問題」に取り組む企業が少ないのは、経営に統合しにくいから。しかし、ヤシの実洗剤で有名なサラヤや食品メーカーの味の素は途上国でもビジネスを展開しており、貧困問題の緩和に寄与している。
以上の説明を通じて、CSRやSDGsに関連して松本さんに理解を深めていただきました。最後に、松本さんに一段と理解を深めていただくため有益と考えられる書籍を藤野教授が紹介しました。
藤野教授が紹介した書籍の一部
(出所)版元ドットコム(https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784492533697(2024年7月3日閲覧))